1週間の疲れを取る12時までの爆睡の後、今日からオペラの新シーズン。ガルニエでカプリッチオを観てきました。

(写真:パリ・オペラ座HPより)
Richard Strauss (1864-1949)
Capriccio
Conversation en musique en un acte (1942)
Livret de Clemens Krauss et Richard Strauss
En langue allemande
Direction musicale Hartmut Haenchen
Mise en scène Robert Carsen
Décors Michael Levine
Costumes Anthony Powell
Lumières Robert Carsen et Peter Van Praet
Chorégraphie Jean-Guillaume Bart
Die Gräfin Solveig Kringelborn
Der Graf Olaf Bär
Flamand Charles Workman
Olivier Tassis Christoyannis
La Roche Jan-Hendrik Rootering
Die Schauspielerin Clairon Doris Soffel
Eine Italienische Sängerin Elena Tsallagova
Ein Italienischer Tenor Juan Francisco Gatell
Monsieur Taupe Robert Tear
Der Haushofmeister Jérôme Varnier
Acht Diener Jason Bridges, Igor Gnidii, Mihajlo Arsenski, Etienne Dupuis,
Bartlomiej Misiuda, Johannes Weiss, Vincent Delhoume, Mark Richardson
Orchestre de l'Opéra national de Paris
案内係の人から配役表をもらって気付いたのですが、このオペラ、幕間がない。2時間半の間、ずっと見続けなければならないことに気付き、プログラムを買いに行きました。今日の座席は天井桟敷の3列目。前の席との間がそれほどまでは狭くなく助かりました。
開演10分前に「携帯の電源を切ってください。」のアナウンスが流れ、随分早いなぁ、と思っていたらすぐに劇が始まりました。そして開演時間の14時半、シャンデリアの光が無くならない中、弦楽6重奏が始まります。カーセンの演出では「ローエングリン」でも最初から幕が開いていて劇が始まっていました。こういうのが好きな人なのかも知れません。暗い舞台裏で劇が始まり、途中舞台奥にきらびやかなサロンが覗くところも、ローエングリンに似たところがあります。他方、最終シーンへの舞台転換で、一旦降りてきたガルニエのだまし絵の緞帳が再び上がるとそこに全く同じだまし絵の緞帳が下りていたり、鏡の向こうに映るもう一人の伯爵夫人に全く同じ格好をした別人を使っていたり、伯爵夫人が退場していくところでは舞台装置が全て上がっていってスタッフの人たちが待ち受けていて、舞台裏のセットの灯りが全て消えた向こうにバレエの練習をするバレリーナが一人残って練習を続けていたり、と、現実と劇とがいくつも入れ籠になったような構造が作られていたのには感心しました。「オペラは詩(言葉)が先か音楽が先か」という、このオペラの主題の一つである解きようのない問いは、そのまま置くとして、人生と劇との複雑な相関関係をちらりと見せてくれたような、そんな素敵な演出です。
指揮者のヘンシェンの指揮は極めて流麗。ベームのCDでは感じなかった感興の高まりを覚えたのが、フラマンの愛の告白を受けた伯爵夫人が一人舞台に残ったシーン。伯爵夫人の心の高ぶりをそのまま楽譜にしたような音楽は、波のようにうねって次から次へとこれでもかと感情を刺激してきて、その官能的なまでの美しさには舞台が霞んで見えるほどでした。あの部分を聞くためだけにもう一度時間があれば来てみたい、そんな気持ちになりました。
歌手では、誰か一人がずば抜けてはいないものの、チームワークの良さがありました。伯爵夫人のクリンゲルボーンの控え目でありながら確実な歌唱は安心して耳を委ねることができましたし、フラマン役のワークマン、オリヴィエ役のクリストヤニスは伯爵夫人を支える2大衛星といった風。劇場支配人役のロータリングは、ワグナー(例えばバスティーユのローエングリンでハインリッヒ王や、ミュンヘンのマイスタージンガーでハンス・ザックス)では声が聞こえないのですが、ガルニエ程度の箱であまり分厚いオーケストラを背景にしない限り、十分に立派です。伯爵役のベールさん、クレロン役のソフェルさんも、伯爵夫人を立てる堅実な歌唱でした。こういうオペラでは、スーパースターが不在の今日のような配役がちょうどよいように思います。
カフェ・ドゥ・ラ・ペでお茶をした後、日本食材屋で買い出しをして早々に帰ってきました。オペラの新シーズン、幸先の良いスタートを切ることができたようです。