昼まで寝入った今日、再びバスティーユに出かけました。「トロイ人」(ベルリオーズ)観劇です。
「トロイ人」(Les Troyens) エクトール・ベルリオーズ (1963年作) @バスティーユ
指揮:Sylvain Cambreling
演出、大道具、衣装、照明:Herbert Wernicke
合唱指揮:Peter Burian
トロイの陥落(LA PRISE DE TROIE)
カサンドラ:Deborah Polaski
アエネアス:Jon Villars
コロエブス:Franck Ferrari
カルタゴのトロイ人(LES TROYENS À CARTHAGE)
ディドン:Deborah Polaski
アンナ:Anna Elena Zaremba
アエネアス:Jon Villars
ナルバール:Kwangchul Youn
(なお、以下にオペラ座HPから、原文の引用です。主たる登場人物でないところにも、いろいろと気になる人が出ていました。)
Opéra en cinq actes et neuf tableaux (1863)
Livret d’Hector Berlioz d’après L’Enéide de Virgile
En langue française
Direction musicale Sylvain Cambreling
Mise en scène Herbert Wernicke réalisée par Tine Buyse
Décors Herbert Wernicke réalisés par Joachim Janner
Costumes Herbert Wernicke réalisés par Dorothea Nicolai
Eclairages Herbert Wernicke réalisés par Olaf Winter
Dramaturge Xavier Zuber
Chef des Choeurs Peter Burian
LA PRISE DE TROIE
Cassandre Deborah Polaski / Jeanne-Michèle Charbonnet (17, 24 oct.)
Ascagne Gaële Le Roi
Hécube Anne Salvan
Enée Jon Villars / Jon Ketilsson (17, 24 oct.)
Chorèbe Franck Ferrari
Panthée Nicolas Testé
Le fantôme d’Hector Philippe Fourcade
Priam Nikolai Didenko
Un capitaine grec Frédéric Caton
Helenus Bernard Richter
Andromaque Dörte Lyssewski
Polyxène Carole Noizet
LES TROYENS À CARTHAGE
Didon Deborah Polaski / Yvonne Naef (17, 24 oct.)
Anna Elena Zaremba
Ascagne Gaële Le Roi
Enée Jon Villars /Jon Ketilsson (17, 24 oct.)
Iopas Eric Cutler
Hylas Bernard Richter
Narbal Kwangchul Youn
Panthée Nicolas Testé
Deux capitaines troyens Nikolai Didenko, Frédéric Caton
Mercure Nicolas Testé
Orchestre et Choeurs de l’Opéra national de Paris
Maîtrise des Hauts-de-Seine/Choeur d’enfants de l’Opéra national de Paris
14:30開演、全5時間5分 第1部(第1幕・第2幕):1時間30分、幕間50分、第2部(第3幕、第4幕)1時間20分、幕間30分、第3部(第5幕):55分
座席:PARTERRE RANG 17 PLACE54 80
長い闘いになることを覚悟して場内に入ると、今日もぎっしり人が入っています。
この公演、数日前ル・モンドで酷評されていました。曰く、「合唱団はのろまで、ソプラノはヴィブラートが強すぎ、云々。」ただ、結論は、「2000年にザルツブルク音楽祭で行われた時には及ばない。」というものであり、ザルツブルクを知らない身には案外楽しめるものではないか、と楽観視していたのが、ほぼ、その通り。満足できる公演でした。
演出家のヴェルニケさんは数多くのオペラを演出しながらも、2002年に56歳の若さで亡くなってしまった方で、この公演も、2000年にザルツブルク音楽祭で披露されたものを、オマージュを込めてパリ・オペラ座で取り上げる、という趣向だったようです。モルチエ総裁がザルツブルク音楽祭の監督をしていたこともあっての公演、といったところでしょうか。
幕が上がると、半円形の筒のような形の舞台。奥に割れ目がのぞいており、そこにある時は海を表象する水が流れ落ちる岩の階段が見えたり、あるいは巨大な木馬が通り過ぎるのが見えたりします。舞台自体、大きく裂けて段差ができる時もあったりしますが、若干の小道具(階段やついたて)が置かれるだけで場が表現される、というシンプルなもの。「トロイの陥落」の場面では、トロイ人たちは赤い手袋をしている。舞台の枠が赤い布で覆われている。「カルタゴのトロイ人」では、カルタゴ人は青い手袋を、トロイ人は赤い手袋を付けている。舞台の枠も青い布で覆われている。わかりやすく、好感が持てる演出だったのが、2点、ちょっと違和感を覚えました。
アエネアスとディドンのラヴシーンで、壁一面に爆撃、炎上する町の映像が映し出され、バレエが省略されています。グランドオペラの醍醐味が省略されるのは人件費等の関係からやむを得ないのでしょうか。少々残念。それに何故戦争の映像なんだろう。男女の愛というのは戦争と同じぶつかり合いだ、ということなのか。歌詞の内容を追っていけばこの映像の意味も深いところで分かったのかも知れませんが。。。
もう一つ、最後の場面で、赤い旗と青い旗を持った合唱団が舞台袖から乱入してきて、皆で旗を掲げ、観客席を旗で指した後、それを叩き折る、という所作に出ました。歌詞の内容が「アエネアスの種族に対する永遠の憎しみを。我らの子孫と彼の子孫との間で永遠に戦火を交わさんことを。」といった血なまぐさいものであり、おそらくその歌詞の内容に対するアンチテーゼとして国家の象徴である旗を折る、といったことを行ったのでしょうが、仮にこのような解釈が正しくとも正しくなくとも、旗を壊すという行為はあまり美しくない。その他の部分が象徴的でひたすら美しかっただけに、若干残念です。
ただ、美しいばかりであることが想像される「薔薇の騎士」での演出が楽しみです。
合唱団は、ル・モンドの評の通り、確かに「のろま」でした。第1幕など、オーケストラとずれまくっており、どこにリズムがあるんだろう、と居心地の悪い思いをしたり。ただ、数えてみたところ120人を超える数だった、ということもあり、リズムを示しきれなかった指揮者にもその一因はあるのでしょうから、とりあえず「仕方がない。」と諦めておくことにします。ただ、さすがに人数にモノを言わせた合唱の声量は圧倒的でした。
音楽それ自体はさすがにベルリオーズだけあって、美しく陶酔的なメロディーが随所にちりばめられていて、それはそれで良いのですが、予習不足のせいもあるのでしょうか、何か一貫しない、起承転結の結が欠けるような、何となく冗長な感を受けました。昨シーズンの最後に観た「ファウストの拷罰」と同じような印象です。
歌手の方は降臨した女神を支えるキャスト達の好演も印象的でした。アエネアス役のJon Villarsは若々しい印象、大臣役のヨン様は堅実で誠実な歌唱で、ともに大きなブラヴォーを勝ち取ってました(ヨン様の方がその声は大きかったかも)。
そして、デヴォラ・ポラスキーには圧倒されました。少し肩を怒らせて歌うカサンドラに、前回滞在時、シャトレでローエングリンのオルトルートを歌った時を重ねつつ、ヴィブラートがきついのもカサンドラみたいな若干神経症的な役にはいいのではないだろうか、と思いつつ、やはりその舞台映えする身長と美貌に見入り、聴き入りしていました。それがディドン役になると、歌い方が全く変わった。王女としての気品溢れる歌唱と、変わらぬ存在感。ディーヴァが光臨する現場に立ち会うことができました。あの崇高な印象はどこから来るのだろう。とにかく感動するとともに、彼女が歌ったブリュンヒルデを聴きたかった、と思い、ウィーンでイゾルデを歌う時に飛んでいこうかしらん、などという誘惑にも駆られつつあります。
何より今日の白眉はアエネアスとディドンの二重唱の場面。若干冗漫な音楽に意識が飛んでいた時、来るぞ、という気配ではっと我に返ったそのとき、「Nuit d'ivresse et d'extase infinie(陶酔と無限の悦楽の夜)」の二重唱が始まりました。森の中に立ちこめてくる夕靄を思わせるように微かにわき上がってくる弦楽器の柔らかな背景の中、耳を澄まさなければ聞こえてこないような音量で歌われる二重唱。なんて美しいんだろう。映画「恋人達」の夜の場面を思い起こしつつ、トリスタン第2幕の二重唱と重ね合わせたりしながら、とにかく陶酔しました。帰ってきてから繰り返しCD(Dutoit, Lakes, Pollet)で流しているのですが、あの感興は蘇ってこない。やはり舞台は生ものです。奇跡的な経験をすることができました。
それにしても、長いオペラだった。14時半に始まって、劇場を出たのが20時ちょっと前。すっかり日が短くなったおかげで、マチネといえども終演の時間には日が暮れていて、宴の後にはよい雰囲気です。
少々気がかりな風邪の気配を体の中から温めて追い出してしまおうと、15区の韓国料理「名家(Myung Ka)」(19, boulevard Garibaldi, 75015, 01.47.83.41.45)に出かけ、豚の三枚肉定食等で豚肉、青唐辛子、ニンニク、長ネギを摂取し、スタミナを付けようと尽力しました。
来週はまたまた忙しくなりそうです。
Les commentaires récents